行政評価・監視機関の設立プログラム 【目次】 【まえおき】 【I】 【II】 【III】 【IV まとめ】(このページ) 【参考リンク集】

行政評価・監視機関の設立プログラム
─行政の質的向上のために─

World Atlas

IV.まとめ

 本稿では触れられませんでしたが、以上のほかにも検討課題は沢山あります。それらをふまえつつ、行政改革の一つのテーマとして、行政評価のシステム化の作業に、政府として早急に本格的に取り組まれることを期待します。すなわち、行政改革の各論とともに、原則論にも取り組むことが、これからの行政のありかたを根底から変えていくきっかけになると考えるからです。

 行政評価・監視機関における行政評価と行政監視のウエートはおよそ6対4と考えています。行政評価のウエートがやや高いのは、行政評価がひととおりできない限り公正な行政監視をすることはむずかしいからです。最初筆者は行政監視という概念にとらわれていましたが、しばらくたって、行政評価の経験を積みある程度自信をもって行政評価ができるようになれば、おのずと行政監視もできるようになる、と考えるようになりました。

 ところで平成9年7月6日に実施された東京都議会議員選挙の投票率は40.8%でした。投票率が史上最低だったことは選挙関係者、候補者、有権者ともに反省すべき点が多いことはいうまでもありませんが、議席獲得数のトップスリーが自民党54、共産党26、公明党24議席と、これまでの議席分布図とは異なる様相を見せ、政界再編に向けた動きが活発になっています。21世紀の近い将来には、従来の枠組みとは異なる政権あるいは連合政権が誕生することも予想されます。
 ここで大切なのは、いかなる政権であろうと、いかなる政権が誕生しようと、行政の透明性(行政手続き、決議、執行等の内容・過程のわかりやすさ、理解しやすさ)が確保され、情報公開が推進されなくてはならないことです。行政評価・監視機関が設立されたならば、このような行政の透明性を確保し情報公開を推進するための、チェック機構としての機能を果たしうると考えます。

 ここで提案した行政評価・監視機関の設立プログラムは、プロジェクトベースの作業になろうと予測しています。行政評価の定式化、行政指標および行政チェックリストの立案・策定という「行政評価のシステム化」がある程度進行してから、「行政評価・監視機関」を発足させるのか、それとも、「行政評価・監視機関」をあらかじめ発足させて、その機関の業務の一つとして「行政評価のシステム化」に取り組むのかにより、プロジェクトの進め方が異なりますが、私見では、二年程度の準備で、この行政評価・監視機関をなんとか軌道に乗せられるのではないかと考えます。と同時に、二年程度で軌道に乗せなくてはいけないとも思います。そうして気持ちを新たに21世紀を迎えることができればと思います。

 このような作業はわが国だけに限りません。諸外国でも似たようなお国の事情をかかえていて、行政評価のシステム化が必要とされているのではないでしょうか。ただし行政評価のシステム化といっても、政治体制や社会的背景が国により異なりますから、各国おのおの独自の行政評価システムがおそらく創出される(あるいはすでに運用されている)と予想されます。
 筆者は、行政評価システムの出来不出来にさほどこだわっていません。というのも行政評価システムができたとして、大切なのはそのシステムの出来不出来ではなく、そのシステムを行政評価・監視の日常業務のラインに取り込んで実際に効果的に運用しているかどうかということだからです。必要に応じて随時行政評価システムを改善していけばよいと考えています。

 将来の話になりますが、行政評価・監視機関が世界各国に設立され、それらの各国機関がゆるやかな連携を保ちながら、各国の行政を評価し監視するようになれば、現今の国際連合が果たしきれない役割を、多少とも担い補完することができるのではないかと考えます。

 以上のことから、わが国(政府および地方公共団体を含む)として新たな行政評価・監視機関の設立に本腰を入れて取り組むことが、世界に対し日本の行政を再認識させ、日本を質的に向上させるのに大いに貢献すると考えます。

 行政評価・監視機関の設立プログラムの趣旨が理解され、運よく機会を得て実施に移されることを願いつつ、本稿を終えさせていただきます。

以 上 

(平成9年8月30日 堀場康一) 

前頁 【III】     次頁【参考リンク集】


(Ver. 1.0 2002/07/08)
Copyright (c) Koichi Horiba, 2002